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駐車場に戻り、バイクに乗ると、僕たちは行きに通り過ぎた『お亀の湯』に向かった。
山登りで汗をかいたので、温泉でさっぱりするつもりだ。
『曽爾高原ファームガーデン』のバイク置き場に『マジェスティ』を停め、『お亀の湯』に向かって歩く。
茅葺きの門を潜り、温泉施設の中に入る。入り口で靴を脱ぎ、入湯料金を払って奥へと進むと、人で賑わっていた。瓶入りのコーヒー牛乳を飲んだり、土産物コーナーを見たりと、皆それぞれに、湯上りの時間を楽しんでいるようだ。
入湯料金と一緒にタオルのレンタル料金も払っていたので、温泉の入り口でオレンジ色のタオルを借りる。僕が男湯の暖簾を潜ろうとすると、山羽も女湯の暖簾を潜ろうとした。
「山羽も入るつもりなのか?」
「もちろん。じゃあ、また後でね」
ウキウキと楽しそうに暖簾の中へ入っていく山羽を見送りながら、霊が温泉に入ると、湯船はどういう状態になるのだろうと思った。山羽のかたちに、湯がぽっかりと空くのだろうか。
「大丈夫なのかな……」
心配になったが、山羽はもう、女湯の方へ入ってしまった。追いかけることも出来ないので、
「ま、いっか」
僕は気楽に考えることにした。
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