僕とバイクとユーレイの君

14/24
75人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 男湯の方へ入った僕は、脱衣室で服を脱ぎ、浴室へ入った。さっと見回したところ、内湯も露天風呂も人が多い。若い男性は少なく、中年から老年の男性が多いようだ。  「まずは体を洗わないと」と洗い場へ向かうと、満席だった。 (うわ、どうしよう。待つしかないかな)  困っていると、一番手前の洗い場にいた中年男性が、 「兄ちゃん、ここ使えばいいよ」 と立ち上がった。50代ぐらいだろうか。髪は短く、黒く日焼けしていて、引き締まった体をしている。彼はどうやら、たった今、体を洗い終わったところのようだ。 「あ、すみません。ありがとうございます」 「今日は混んでるからなぁ」  そう言うと、男性は露天風呂の方へ歩いて行った。もう一度「どうも」とお礼を言って、男性の背中を見送っていた時、 (ん?) 僕はあるものに気が付いて、目を瞬かせた。  男性の首筋に、痣がある。  ふと、おかめさんが言っていた、花の痣のある赤ちゃんのことを思い出した。 (まさか……いやでも、おかめさん昔の人だし、赤ちゃんが生きているとも思えないし、そもそもあの人男性だし)  頭の中で、いろんな考えがぐるぐると回る。 (赤ちゃんの生まれ変わりとか?)  僕は超常現象的な存在を見ることができるので、世の中には科学では説明のできない不思議な出来事があるのだと知っている。「生まれ変わり」というものがあると言われても、僕はきっと信じるだろう。 (とりあえず、体を洗わなきゃ。それで、後で露天風呂に行って、あの男性と喋ってみよう……)  僕は、備え付けのシャンプーとコンディショナーとボディソープで頭と体を手早く洗うと、タオルで前を隠しながら露天風呂へと向かった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!