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すぐに曽爾高原に着くと、僕たちは駐車場にバイクを停め、降り立った。
「川瀬さん、めっちゃ運転上手いですね」
尊敬のまなざしで称賛すると、川瀬さんは、
「もう20年以上も乗ってるからなぁ」
とやや自慢げに答えた。
他愛ない話をしながら曽爾高原の入口に向かい、中へと入る。
僕と会話をすると川瀬さんにおかしく思われることが分かっているのか、山羽は黙って後をついて来る。
お亀池までやって来た僕たちは、おかめさんと出会った場所に向かった。
「本当に、女がいるのかい?」
「はい。……たぶん」
おかめさんが、まだ池のそばにいるかどうかは分からなかった。それに、いたとしても、霊体のおかめさんの姿を、川瀬さんが見ることが出来るとは思えない。
(それでも――。とりあえず、行ってみよう)
いつの間にか、夕日が山の端にかかりつつあった。
(帰りは暗くなっちゃうな。走りにくくなるけど……仕方ないか。夜の曽爾高原は星が綺麗みたいだし、少し見てから帰るのもいいかもしれない)
そんなことを考えながら目的の場所まで来ると、果たして、おかめさんはそこにいた。
「あっ、いた」
僕は声を上げた。川瀬さんが僕の視線の先に目を向け、
「何がいるって?俺には何も見えないが……」
と怪訝な表情を浮かべた。
「川瀬さん、見えませんか?そこに、着物姿の女の人がいるんですけど……」
僕は恐る恐る川瀬さんに説明をした。川瀬さんは眉間にしわを寄せ、
「誰もいないぞ。もしかして……あんた、幽霊でも見ているんじゃないか?」
と言った。
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