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食券機でカレーの食券を買う。山羽も食べたいと言ったので、2枚。カウンターで差し出して、ブザーを受け取り、しばらく待つ。
「カレー、昂は好きよね。家でもよく食べるんでしょ?レトルトのやつ」
「レトルトも美味しいよ。でも、行きつけの店のカレーが一番かなぁ。甘くて美味しいんだよな」
「お子様味覚」
「ほっとけ」
ブザーが鳴った。僕はカウンターまで行くと、トレイにのせられたカレーを持って、山羽の元へ戻った。「はい」と言って、彼女の目の前に皿を置く。
「ありがとう」
「ん。じゃあ、食べようか」
「いただきまーす」
「いただきます」
2人同時に、スプーンを手に取る。大口を開けてほおばると、辛さと甘みが絶妙だった。
(それにしても、山羽の食事風景は、他の人にはどう見えてるんだろうな)
僕以外の人間には姿の見えない山羽だ。他の人からは、宙に浮かんだスプーンが何もないところに消えていくように見えるのだろうか。まあ、人目につかない席を選んだから、大丈夫だとは思うけど。
ひとしきりカレーに舌鼓を打った後、僕たちは「ごちそうさま」と手を合わせ、食器を返却口に返し、外に出た。
いい感じにお腹もくちくなった。
バイクの元へと戻ると、シートの下にしまっていたヘルメットを取り出して、再び被る。バイクに跨ると、山羽も軽やかに後部シートへ座った。
『針テラス』を出ると、僕たちはまっすぐに、曽爾高原へと向かった。
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