僕とバイクとユーレイの君

8/24
前へ
/24ページ
次へ
 山間の道を再び30分ほど走ると、左手に、そそり立つ山々が見えて来る。屏風岩、鎧岳、兜岳だ。屏風岩は鋸の刃のように鋭い岸壁があり、ギザギザとした姿が屏風に見える。鎧岳は三角に尖った雄々しい山だ。兜岳は女岳とも言われていて、鎧岳よりも緩やかな柔らかい三角の形をしている。  ここまで来ると、曽爾高原はもうすぐだ。  道中、他のバイクを何台も見かけた。皆、ツーリングに来ているのだろう。 (この感じだと、曽爾高原も人が多いかもしれないな)  明らかに僕と同じ行き先だと思える自動車も、多く見受けられる。  予想は当たって、曽爾高原へ向かう途中にある『曽爾高原ファームガーデン』の駐車場は自動車でいっぱいだった。オフシーズンにはあまり人が来ていないというのに、さすが、ススキの季節だけある。外出自粛の雰囲気も、すっかり和らいだというところだろうか。  『曽爾高原ファームガーデン』はレストランやお土産コーナーなどのある休憩スポットだ。敷地の奥には『お亀の湯』という温泉施設もある。 (帰りに寄って行こうかな。あそこの温泉、結構気持ちいいんだよな)  内心でそんなことを考えているうち、目的地に到着。駐車場には、まあまあの台数のバイクが停まっていた。  シート下からバックパックを取り出し、かわりにヘルメットをしまうと、 『マジェスティ』に鍵をかけ、僕の準備が整うのを待っていた山羽に声をかけた。 「行くよ」 「うん。行きましょ」  山羽はにっこりと笑うと、スキップをするような足取りで、僕を追い越していった。 (道、分かるのかな)  山羽と一緒に曽爾高原に来たのは初めてだ。人の流れがあったので、山羽はすぐに高原への入り口が分かったようだ。草餅屋の屋台の横を通り過ぎ、坂を上っていく。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加