神がしいた道

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シアン兄にそっくり……もとい御子孫にあたられるシーニー様。 シアン兄とマジェンタの一人息子であらせられる現太上皇、御年九十を過ぎてられるアメシス様には、妾を含めて五人の御子息がいらっしゃる。 シーニー様はその三男、フィオリェータヴイ様の第一子でいらっしゃるとのこと。 ……つまり、十分にこのコランダム世界の王位継承権があるという御方なのだ。 「私からしましたら。 神様でいらっしゃるコランダム様の一柱に従事されていたという、貴女のほうが余程に尊いと思うのですが」 そうシーニー様は仰って笑われた。 その微笑みが私に向けられているというだけで、胸が高鳴ってしまう。 長年のシアン兄への思いと目の前の御方をダブらせてはいけない、と分かっているのに。 「無茶なお願いなのかもしれませんが。 私の前で、そう緊張なさらずに楽にしてもらえないでしょうか。 私はシズさんに、窮屈な時間を提供したい訳ではないのです」 「え、あ、はい、す、すみません……」 シーニー様ってば、私とのお茶の際に付き人なのか執事なのか……共にいらした人に「先に博物館のほうに足を運んでおいてもらえますか。 後ほど伺います。 館長さんにそのようにお伝えください」と告げて所謂『人払い』なさってくださった。 おかげで私たちは、現在非常にプライベートな時間を過ごせている。 私自身の過去や主様とのことを話す機会に恵まれるだなんて、夢にも思わなかった。 なんといっても彼は【同調】の魔法を行使してくださったことだ。 私の心の内側、内面に同調して話を聞いてくださった……もとい語りきれていないところも、【同調】で感じとっていらした。 たしかに私の過去などというものを真面目に語りだしたら、半日かかっても終わるものではないだろう。 【同調】にそんな使い方があるなんて知らなかった。 喫茶店の会計もスムーズにこなされたシーニー様に連れられ、王室御用達リムジンに通された。 なんといってもこのリムジン、車内に魔法陣が施されている……凄い。 「ふふ。 人目をはばかって生活しておりますからね。 ……悪いことをしている訳でもないのに、可笑しいことだと思います」 そう言って私に極上の微笑みを向けてくださる。思わず「私、【空間転移】出来ます」と言いかけたけれど、あまりに図々しいかと思って飲み込んだ。 それなのに。
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