神である由縁

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『何故!!』 しかしここで、アダムが吠えた。 見た目は本当にユメカワなぬいぐるみだけど、なんとなくだけど肉体を放棄する前に見たアダムの姿が透けて視えるようだった。 それほど今の彼の声には気迫があった。 『なぜそのような事を……っ、我らは、神力を保てぬようでは世界を滅ぼしてしまう、大切な世界を沢山の命を以前のように踏みにじってしまう……それを危惧するが故に今までを頑張ってきた……っ』 だけれど、目の前の『あのお方』は全く動じない。 『そうだね。 それは命の……人間たちの嘆き、そのものなんじゃないかな? どう、有限を身をもって体験して。 大切なもののために犠牲にすることが必要な場合だってある。 よく分かったんじゃないの? ……コランなら分かるんじゃないかな。 イザナギはなんて言ってた? 彼は……運命をめちゃくちゃにしたコランダム神を憎んでた?』 ……おいらは。 やるせなさに涙で頬を濡らしたボルカシャと、凄い形相で睨みつけてきたディオンしか知らないんだ。 だけど彼らは……おいらたちと同等の神の存在に昇華した。 無限の時を得た。 『命ってねー、神が思ってるよりも。 よっぼどにタフなんだよ。 いつまでもコランダム神のことをグチグチねちねちと恨んでる暇なんか無いんだ。 だってあの二人……いやあの二柱は、あの後必死で世界を動かしていかなきゃいけなかったんだ。 凄いはやさでまわってるんだろ、彼らの深界。 ははっ、ぶっちゃけ今のみんなよりもう年季入ってるかもしれないよー? アダムは多少は分かってる……感じてたんじゃないかな、なんにしろ深界をそれなりに担当してたんだから。 彼女は、彼は……コランダム神をいつまでも許せないまま、かな? そんな彼らなら、アイストレンジはあそこまで発展した?』 『あのお方』はおいらたちをぐるりと見渡された。 なんとも勝ち誇ったような顔をされて、おいらたちに再度問いただされる。 『で、なに? コランダム神に還りたいんだったっけ? ご希望とあらばボクにとっちゃあ造作もないことだけどね……どうする?』
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