23人が本棚に入れています
本棚に追加
「『近い将来、災いが訪れる。 子らは意に介することなく巻き込まれる、回避は出来ない。 この運命に抗うために《コウギョクノナミダ》を要する』……って」
「……えらいザックリだな……概念の話であって、つまりはどういうことなのかが全く伝わらない……」
近い将来とはいつか? 災いとは何なのか? それを回避するために必要だという《コウギョクノナミダ》というのはなんであるのか? 事象の比喩なのかそういう物体であるのか?
そもそもこれを告げてきた者の意図とは? 更に言うならこの者とは誰であるのか。
「分かんないけどね……なんだか凄く重い、というか胸が苦しいっていうか。 圧迫感が凄くて。 積年の重みっていうか……夢の中なのにそういうのをひしひしと肌で感じてたから、なんていったらいいかな、言葉には出来ないけど信憑性があったの。 ……うーん、マサに伝わるかなぁ」
「……つまりは神様……告げてきた者とは『コランダム様』ではないのか、と。 ルナはそう感じたと?」
突拍子もない想定ではあるがそう聞いてみたら、ルナは顔を赤くしながらも強く頷いた。
「……でね、一番マサに伝えたかったのはこれなの。 『……助けて欲しい』って。 助けてって言われたのよ」
神様かもしれない概念が、夢の中にて救助要請……? なぜそれを名家の令嬢といえまだ学生であるルナに伝えてくる? いやまず前提の『助ける』とはどういうことなのか。 その災厄回避のための《コウギョクノナミダ》がいる、ということなのか。
「……あ」
空から一雫、落ちてきて頬に当たった。 やはり降ってきた。
「あ~……降ってきちゃったね。 どうしよう……うちに来る?」
「私は一向に構わないが、ルナのほうはどうなのだ? 忙しくされてないか? 名家のお邪魔になる訳にはいかないからな」
「名家って……そんな大袈裟な。 お父さんもお母さんもマサならいつでも大歓迎よ。 今日のお菓子は絶対食べてもらいたいから!」
言いながら、二人とも鞄から携帯している折り畳み傘を取り出す。 彼女とは昔からの付き合いだ、お互いに傘を持っていないなどという手抜かりはない。
灰色のどんよりとした空は、ついに大粒の涙を零し始めた。 彼女の話の内容が内容だっただけに、本当に空が泣いているように感じられた。
最初のコメントを投稿しよう!