神がしいた道

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『力を貸して欲しいんだ』 ひとしきり感慨にふけられたあと、コラン様は真っ直ぐな瞳を私に向けられてそう仰った。 「わ、私でお役に立てることが……?」 『もー、フクちゃんだから頼めるんだよー! おいらとフクちゃんはスッパイ仲だもんね! ちょっとスッパイシーなスパイ業務を頼みたいんだ』 相変わらず、なんだかなぁな駄洒落を織り込まれて話される。 なぜだかシニアークの博物館館長の彼、パビエーダ氏が浮かんだ。コラン様は彼となら楽しく会話されるのではないだろうか。 『……あ、分かるー? こないだイチジク館長さんともお話したよ。 彼のお父さんは、すっごい頑固だったけどね!』 笑われながら、私に手招きをされる。 コラン様にあわせて屈むと、彼は私のおでこにその手をかざされた。 『口で説明しきれないからさ、感じ取ってよ。 そっちのほうが正確だしね』 私の脳内に、彼の記憶の映像が流れ込んでくる。 私の脳内に彼が伝えたいことが上書きされていく――― 「……つまり。 そのシズさんに会って尽力しろ、と。 こういうことでよろしいのでしょうか」 コラン様は新たに仲間を得ていらした。 その仲間たちは、これから神様が敷いた……強いた道に沿ってとんでもない局面を迎えることになる。 コラン様は神様でいらっしゃる以上、なさなくてはいけないことがある。 だから――― 『魔法と医学機器を合わせるなんてさすがだよね! ……うん、フクちゃんの力でさ。 おいらの仲間たちを救って欲しい。 神様は……望んじゃいけないんだ。 神様ってのは望みを叶える立場だからね。 だけど、だけどおいらは……』 コラン様はきっと。 得られたというその仲間たちを、失いたくないのだろう。 そう望んでしまうご自身にどこか背徳感を覚えられながらも。 「コラン様のお仲間たちにだって、当然お父さんお母さんがいて、友達や恋人もいるでしょう。 そのお仲間たちを救いたいのは決して、コラン様の我儘などではなく、その者たちにとっても切なる願いかと思います。 人とは……そういう生き物ですから」
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