神である由縁

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深界―――それは、命の存在がおいらたち神に対して反抗することを指す。 おいらたちからすれば、深界とはかつてのトラウマに他ならない。 だけど、アダムが真っ先にそれを承知した。 そして彼は『あのお方』に哀願したのだ。 『新たなる深界が無事に成った際は。 分かたれた我らを元のコランダムへと戻していただけるよう、切にお願いしたい』 ―――……いいよ。 コランもランダもアダムも、神としての時をたっぷり楽しめたってことなら。 四大名家の子どもたちが深界を造りあげた後に、コランダムの願いを叶えてあげる。 ボクの名にかけて約束しよう――― かくしておいらたちは、四大名家の子どもたちに深界を造ってもらうように導かねばならないこととなった。 しかし、『あのお方』がそう仰ったほんの数日後、おいらたちが通常業務を行っている間に。 ぽーんと新たなる深界は勝手に成ってしまった……! ランダはその際、四大名家の子どもたちのほうに探りを入れ始めていた。 この時点で魔法力の暴走を起こして自暴自棄になっていたアラハと接触している。 ちょうどアダムが深界『アイストレンジ』でなく、コランダム世界に出てきている時だった。 シニアーク地方の片田舎にて工場の火災があり、アダムはその際ロキとナギの両親を命が死する直前に外界に導いた。 そしてナギの担当はおいらだったけれど、おいらはすぐにナギを見つけられた訳じゃなかった。 ナギはおいらが知らない力にて、勝手にその場所を移動させられていた。 それこそコランダム世界の深淵、奥の奥の層に。 情報はすぐにランダともアダムとも共有した。 皆で話し合って、これが命の存在が造ったという新たなる深界だという結論に至った。 厄介なことに、この深界は『時』が捻れた状態でスタートしてしまったようだ。 世界を創造した新たなる神は未だ実体化せず、それなのにコランダム世界にて消えかけた命ことナギはここにこうして転移されている、そんな事態。 駆けつけたおいらたちが今いるこの広々とした空間は、この新たなる深界の核なのだろうことは神様であるおいらたちにはすぐに理解出来た。 ここで倒れているナギも精神体のみだけであり、肉体のほうは既に世界に馴染んでいるだろうということも。 四大名家の子らに探りを入れていたランダが、実体化していない虚像の状態で固まっている神を見ておいらたちに告げる。 『彼女……多分、四大名家の子どもの一人だと思うわぁ。 フォーゲイ地方の、えぇと……アスカちゃん、だったかしら』 ランダいわく、まだ彼女はコランダム世界では五歳の女の子だけどね、ということらしい。
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