神である由縁

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今のところは静観、傍観のようではあるけど……そもそも、おいらたちが深界を造ろうとしているのは、四大名家の子どもたちに「その時」を迎えさせようとしているのは、『あのお方』の指針に()る。 そこに強引においらたちの悲願が引っ付いた感じ……というのが正しい。 それつまり、『あのお方』もコランダム世界に深界が成ることを期待されている、ということ。 仲間として絆が育まれていた彼らに命を懸けさせる……しかもアスカに至っては、コランダム世界から旅立たせる訳だ。 辛くない訳がない。 彼女やロキと深く関われば関わるほどに辛いのだ。 おいらたちの悲願のために、仲間をその心を無茶苦茶にしてしまうことが、辛くてたまらない――― 『泣いたっていいと思うよ。 心のままに』 今生の別れの際に、ナギはそう言った。 もう訪れることは出来なくなるサンリアの中核から、コランダム世界に転移する際。 おいらは必死でボルカシャを思い起こした。 ディオンの慟哭の記憶を呼び起こしていた。 おいらは―――コランダム神は、泣いちゃ駄目なんだ。 そんな資格なんてない。 彼らの無念を思えば、おいらの辛さなんて軽いもののはずだ。 泣いてしまっては、彼らの無念を軽視してしまう、そんな気がしてしまうのだ。 ……ランダは、耐えきれずに涙することがある。 それゆえにその涙は物凄いチート級の力を持つに至った。 彼女は彼女の欲望からしかエネルギーを摂取しなくなった。 食べられない体だという訳ではない。 おいらが涙することを自戒としているように、ランダは美味しいものを食べて幸福感を味わうことを自戒としていた。 彼女は幸せだと思う気持ちを抑えることで、彼らの無念に向き合っていた。 きっとアダムも何か彼なりに自戒があるのだろう。 あのオッサン、自分のことをあまり喋らないから知らないけど。 ひょっとしたら肉体を放棄したこと自体が、既に彼なりの自戒なのかもしれないし。
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