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「ところでユウキ、洋服はどうする?」
マコトは僕に洋服まで着せてみたいようだ。
ハンガーラックに掛けてある洋服から、僕は小花柄のシフォン地のワンピースを選ぶ。
するとマコトが、そのワンピースを無理矢理、僕の手から奪い取った。
「もぉー、こんな普通の感じでいいわけ?どうせなら冒険してみなよ。はい、これ」
マコトが手渡したのは、ワインレッドのレースが艶やかなワンピースだった。
ケンさんに試着室に案内され、ワンピースを体に当てて鏡を見ると、それだけで非日常の世界に迷い込んだ気分になる。
「ほんと綺麗ね~。マコちゃんは可愛い系だけど、ユウキ君は綺麗系ね」
ケンさんが近づく度に、強い咽せるような香水の匂いがした。
ワンピースに着替えて、マコトの元に戻ると、彼はアイドルの衣装のような、いかにも女の子な出で立ちで僕を待っていた。
「悔しいけど、ほんと綺麗だわ……じゃあ、写真撮ってもらお!」
カメラ担当の丹羽さんに上手く乗せられ、僕は取ったことのないモデルのようなポーズで写真に納まる。
「マコトに聞いたけど、今日が初めてなんだって?」
丹羽さんは、さり気なく僕の腰に手を回してきた。
ケンさんと違って、大人の男らしい匂いがする。
不思議と嫌な気はしなかった。
「……はい」
ケンさんにはスラスラと話せたのに、丹羽さんには上手く話すことができなかった。
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