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「そう?」
僕は動揺を隠したつもりだった。
「丹羽さんがいないから?」
マコトは、あっさりと僕の心情を読み取った。
「そ、そんなことないよ」
思わず声が上擦る。
「分かりやすいな、ユウキは……ねぇ、ケンさん?」
「あら~、ユウキ君。丹羽さんのこと気になってるの? やめときなね、あの人は……」
含んだ言い方をするケンさんは、言葉とは裏腹に、訊いて欲しそうな顔つきをした。
「何かあるんですか? 丹羽さんて……」
「ふふ、マコちゃん。何も教えてあげてないの?」
ケンさんは楽しそうにマコトに話を振る。
「ユウキには刺激が強そうで……」
「僕だって、そういう話くらい、聞いたことはあるから」
心臓がバクバク打っているのを隠しながら、強がって言った。
「あのね……」
マコトの生温かい息が僕の耳に伝わる。
その話は、思ったよりもずっとディープな内容で、自分が足を踏み入れた世界の裏側を垣間見たような気がした。
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