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ぼっちゃまが辛うじて意識を取り戻したのはストレッチャーに乗せられ、緊急搬送される救急車の中だった。
ばあやが起きたのが遅かったんじゃないんだね?
僕が起きるのが遅かったんだ。
フラフラしたのは寝起きだからじゃなかった。
…今日がどの日よりも1番調子が悪かったんだ。
また意識が刈り取られるギリギリまでぼっちゃまは今日の事を振り返っていた。
すると、
「ぼっちゃま!ぼっちゃま!」
薄れゆく意識の中、救急隊員の声より何よりいつも聴き慣れた声が鮮明に聴こえてくる。
僕の手をしっかりと握ったばあやが目を真っ赤にして僕の事を読んでいた。
あぁ。ばあや、そういう事だったんだね。
ばあやが最近目が赤いのは僕のために泣いてくれてたんだね?
きっと、あの日、僕が病院でジュースを買いに行った時、ばあやは僕の死期が近い事を医者から伝えられていたんだね。
ありがとう。ばあや。本当に今までありがとう。
ぼっちゃまは最後の力を振り絞った。
「ばあや」
「最後の約束を守ってくれてありがとう」
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