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散々流れ落ちたはずの涙はまたばあやの頬を流れていった。
「ぼっちゃま。逆なんですよ。先にあの世に行くのは、ばあやから先なんです。母親より先に息子が先に死ぬなんて親不孝者でございます」
「でも、心配はいりません。ぼっちゃまは寂しがり屋でばあやが居ないと何も出来ないですからね。
玉子焼きの味付けも掃除だって出来やしない。
私もすぐにそちらへ行かせてもらいますから待っててくださいね」
棺の中のぼっちゃまが微笑んだ気がした。
ばあやはその笑顔を返すように優しくぼっちゃまに微笑んだ。
ぼっちゃまの棺の前で跪き、深々と頭を下げる。
「ぼっちゃま」
「私こそ、あなたに仕える事が出来て幸せでしたよ」
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