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「帰ってきたら手洗いうがい!
靴は揃えて並べてくださいまし!
着ていたジャケットはハンガーに吊るしさないと皺になります!」
大きな屋敷全てに響き渡る様な怒号が聞こえ、近くで羽を休めていた鳥たちが瞬く間に飛び去っていった。
しかし、おぼっちゃまもそんなばあやの言動を気にも止めず、マイペースにソファから立ち上がった。
「はいはい。今からやろうと思ってたんだよぅ」
靴を片付けようと玄関に向かうぼっちゃまにばあやはさらにちくりと追い討ちをかける。
「やろうと思っていたらやってくださいまし!
あと『はい』は1回でよろしいでございます!」
台所ではコポコポとお湯が沸く音がしていた。
「そんなに大きな声を出したら体に触るよ」
「だったら大声を出す様なことをしないでくださいな!」
全て終わらせたぼっちゃまは少ししょげながらにテーブルについた。すると、ばあやがトレーに紅茶とクッキーを乗せて台所から出てきた。
「さぁ、お茶に致しましょう」
先程の怒号が嘘の様にばあやはニッコリとぼっちゃまに微笑んだ。
これが彼らの日常。いつもの生活だった。
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