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「いや、今日は素材の味?を楽しんでもらうためにあえて味付けをしなかったんだよ」
苦しい言い訳をするおぼっちゃまにやれやれと言った感じでばあやは頭を横に振った。
「全くぼっちゃまには私がついていないといけませんね
今日は大根をおろして醤油で戴きましょう」
ばあやはいそいそと食器入れからおろし器と大根を取りに行った。
「ばあやは座ってゆっくりしててくれ!今日は僕がご飯を作るから」
「これくらいはお手伝いさせてくださいまし。ぼっちゃまだけに料理をやらせるのは心苦しいというものです」
こういったら最後。ばあやは絶対に意思を曲げないのでぼっちゃまも従うことにした。
「ぼっちゃま」
ふと、声をかけられたぼっちゃまが顔を上げると、ばあやはピンというのに相応しいほど背筋を伸ばし、真剣な表情で深々と頭を下げた。
「お心遣い、ありがとうございます」
急にかしこまったばあやに不意をつかれたぼっちゃまはハハッと笑った。
味噌汁が鍋の中でグツグツと音を立てていた。
ぼっちゃま!味噌汁が煮えたぎって溢れそうです!と大声でばあやが指差した。
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