木曜日

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木曜日

「ぼっちゃま、ぼっちゃま。 今日はいい天気でございますよ」 雲ひとつない快晴が空一面に広がっている秋晴れに興奮気味にばあやはぼっちゃまを呼んだ。 「そうだねぇ。とても気持ちの良い日だ。 良かったら散歩でも行かないかい?」 ばあやは「わたしも同じことを考えていました」と微笑んだ。 屋敷の裏には山が連なっており、そのどれもぼっちゃまの私有地だった。 ゆっくりとぼっちゃまとばあやは歩き慣れた山道を登っていく。 突然、ばあやがふふふっと笑い始めたので不思議に思ったぼっちゃまが何がおかしいの?と尋ねた。 「ぼっちゃまが小さい頃、家出する!とこの山道を歩いていたら本当に迷子になった事がありましたね」 また痛いところを突かれたとぼっちゃまはギクッとする。頬を少し掻き、恥ずかしそうに当時を振り返った。 「あの時少し悪さをして父上に怒られたからね。 つい勢いで家出するって出ていってしまった。 それでも最初に見つけてくれたのも父上だったなぁ」 「この道は数少ない父上と何度も登った思い出の場所なんだ」 生い茂る木から落ちた葉が黄色の絨毯を山にひいていた。2人が歩むとガサガサと葉っぱが擦れて音を立てた。
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