証言者:密偵C

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証言者:密偵C

 間違いなく、将軍はお嬢様によって仕留められました。  死体が見つからないのは痛恨の極みですが、私が証人です。お嬢様の持った短剣は将軍の胸に深々と突き刺さっていました。あれは致命傷です。ましてやあの爆発、そして馬車もろとも谷底へと転落したのです。生きているはずがございません。  お嬢様が将軍に嫁がれて二年……刃では敵わないと毒殺を目論んだはいいものの、庭園の花に毒を仕込んでも効果がなく、食事にそれとわからぬよう毒を盛ってもなかなか手をつけない。寝室に毒針を仕掛けても見抜かれる。呆れるほど警戒心の強い男でしたね。ずいぶんと手こずらせてくれました。  嫁がれたお嬢様もきっと焦っていたのでしょう。初めての仕留められない標的でしたから。暗殺者として育てられたプライドもあったかと、僭越ながら推察いたします。翌月には婚姻が解消されることをお聞きになって、是が非でも自らの手で、と思われても不思議ではありません。  だからあのような凶行に及んだのでしょう。我が身をかえりみずに標的の命を奪う。証拠隠滅も抜かりなく、事故死に見せかけてーーお嬢様は、暗殺者の鑑です。
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