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「ほら、学校で体積ってならったやろ?」
私はウンと小さく頷く。
「さっきまでここに、どっしりと存在してた人分の体積が急に消えてなくなってしもたらどうなると思う? ぽっかりなくなった空間を埋めようとして、空間がよれたりヒズミができると思わへん?」
私はおばあの言っていることがよくわからなかった。
実は算数あまり好きじゃないし・・。
「昼から夜になる場所で、死んだ人たちの体積分の空間のヒズミを調整するんやって。それが、昼と夜の間、夕方や。」
「ふーん。」
おばあの言ってることは正直難しすぎてよくわからなかった部分もあったけど、とりあえず、死んだ人にはちゃんと行く場所があってそこは何か優しい場所のような気がした私はどんな場所かに思いを馳せていた。
「どんな場所かな?」
「夕方、空を見上げてみ。」
おばあは言った。
「息を飲むほどキレイやったり、美しかったり、キュンってしたり静かだったり、訳もなく涙がでそうになったりするやろ。そういう場所やって・・・」
「うーん。よくわかんないや」
そう私が笑って正直にいうと、おばあもフフフと笑って言った。
「おばあも全部はわからへん。死んだ人の言うことは」
「おばあが死んだら私に教えて!」
「修行してや!死んだおばあと話せるように」
「するする」
私は無邪気に言った。するとおばあは私の肩を優しく抱いて言った。
「でも、まだ死なへん。私はアンタの大当たりのおまけやもん」
そう言ってバチンとウィンクをした。
それから、夕方、空を見上げるのが私の日課になった。一人の時もおばあと一緒の時も。
どんな場所かはわかったようなわからなかったようなだったけど、会いたい人がいて寄り添ってくれるような場所は私の心の支えにもなった。
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