5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところで、ソウちゃん。この惨状はいったい? どこの造園業者の仕業? 剪定した枝やら葉っぱやらはキレイに片付けてってくれないと?」
「紅鷹、まさか昨夜の台風を知らないのか?」
「えー、台風? マジ卍? 寺だけに──ぷぷっ」
瞬間最大風速三十メートルの暴風圏内にありながら爆睡していたとは呆れたやつだ。
「一人漫才はいいから、墓地の物置小屋に行って竹箕と猫車を取ってきてくれ」
散らかった枝葉を片付けるだけで丸一日かかりそうだが、この程度の被害で済んだのは幸いかもしれない。
先月の台風では本堂の屋根瓦が何枚か剥がれ落ち、その修繕費を賄うために急遽、予定外のイベントを開催しなければならなかったほどだ。その際は一般にもチケットが流通してしまい檀家からクレームが来ている。
「大変だ、ソウちゃん!」
紅鷹がゆっくり歩いても一分そこそこの物置小屋から慌てて引き返してきた。
「血相を変えてどうした? 墓石がドミノ倒しにでもなってたのか?」
「墓石じゃなくて人間! 人が倒れてる!」
最初のコメントを投稿しよう!