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物置小屋に駆けつけると、出入口とは反対側の軒下にジャージ姿の少年が一人、こちらに背を向けて倒れていた。
「オシッコしたくなって裏に回ったららいてさ。びっくりして尿意が引っ込んじゃったよ」
「墓場で立ち小便っておまえ、それでも僧侶か?」
とは言え、蒼蓮が竹箒を取りに物置小屋を訪れたときには気づけなかったのだから今回だけは不問にしておこう。
「し、死んでる? のかな? どこの中坊だろ?」
蒼蓮の後ろに隠れるように様子を窺う紅鷹。チャラいキャラのくせに意外とヘタレだったりする。
「ソウちゃん、ちょっと確認してみてくれん? 俺、死体とかマジ苦手。ちょー無理っ」
「死体が苦手っておまえ、それでも僧侶か?」
蒼蓮は片膝をつくと、ジャージの襟元に手を入れて頸動脈のあたりに触れた。昨夜の雨に打たれたのか、学校指定の体操着らしき小豆色のジャージはぐっしょりと濡れている。
「大丈夫だ、生きてる──けど、かなり熱がある。急いで寺務所へ運ぼう」
と、行き倒れのジャージ小僧を抱き起こそうとした蒼蓮だったが、
「──紅鷹、珊瑚にすぐ来るよう連絡してくれ」
「えっ? ゴッチは有給休暇っしょ?」
「旅行がキャンセルになったから母屋にいるはずだ。これは俺たちの手に余る。珊瑚の手を借りたい」
「って?」
「この子は──女だ」
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