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「う、ううーん……」
潤子が小さく呻きながら目を開け、見知らぬ二人の顔に気づいて慌てて起き上がろうとするのを珊瑚が押し戻した。
「急に起きたら駄目。ゆっくり深呼吸して」
「──ここは? あなたたちは?」
「ここは陽苑寺というお寺で、あたしたちは僧侶」
「お、お寺?」
ただでさえ青白い潤子の顔から更に血の気が引いた。
「あ、あなた方はわたしを雲孔和尚に引き渡すつもりなんですか?」
「は? うんこ?」
珊瑚と檸檬が揃って首を傾げる。
「ご存じないならいいです、すみません」
潤子はホッとしたように大きく息をついた。
「わたしを助けてくださったんですね。ありがとうございました」
「詳しい事情は熱が下がってから聞くよ。熱冷ましの薬は飲める? 潤子さん」
「ど、どうしてわたしの名前を?」
潤子の顔色が再び青褪める。いったい何があったのやら。
「あーもう、そんなに警戒しないでよ。名前はジャージに書いてあったやつ。陸奥潤子さん本人で間違いない?」
「はい、相違ありません。ごめんなさい、疑ったりして」
「何を疑われてるのかさっぱりわからないけど、疑いが晴れてよかったよ。あ、薬を飲む前に少し食べたほうがいいね」
珊瑚がそう言うのを待っていたようなタイミングで、
「そろそろお邪魔してもよろしいでしょうか?」
と、翠瞑が襖越しに声をかけてきた。
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