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「他には蒼蓮と紅鷹。その二人が墓地の物置小屋んとこで倒れていたあなたを見つけてここに運んだってわけ」
珊瑚の言葉に自分の身に起きたことを思い出した潤子だったが、
「とにかく今は何も考えず身体を休めて。話はあとでゆっくり聞くからさ」
「……はい」
泣きそうになるのを堪えて頷くと、おじやを食べ終えて薬も飲み、珊瑚と檸檬の介助で母屋に移動した。
本堂の奥に位置する母屋は寺務所と渡り廊下で繋がっており、現在は珊瑚しか住んでいない。
「客間がなくて茶の間でごめんね。トイレと台所はあっち。そっちのドアはあたしの部屋だから、何かあったらいつでも声をかけて」
茶の間に布団を敷いた檸檬と翠瞑は寺務所に戻り、蒼蓮や紅鷹と共にすっかり後回しになっていた朝勤行を始めたようだ。本堂から重誓偈が聞こえてくる。
「ありがとうございます、珊瑚さん。それであの、こちらのご住職様はどちらに?」
「ご住職様?」
「お世話になったのでご挨拶をしないと」
「いいよ、挨拶なんて。人助けは寺の役目だし、ここの住職はあたしだし」
「えっ? ええっ⁉ 女性なのに住職を?」
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