健気

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健気

 健気(けなげ)と言えば 「心がけが善くてしっかりしている」とも訳されるそうだが、私がこの言葉を耳にしたのはテレビ局で放映されている或る時代劇ドラマだった。  或る下町長屋の大家さんと、そこに長年ご厄介になっている店子(たなこ)との会話の一節と想像して欲しい。 「大家さんよ⁉・・弦さんとこの美鈴ちゃんだけどさ、おとっちゃんの病気を治すんだって健気じゃないか⁉・・朝から夜遅くまで傘の張替えの仕事を手伝ってるよ! 家賃の一月(ひとつき)二月(ふたつき)ぐらい大目に見てやれないだろうかね・・」 更には、これによく似た意味合いで聞かれるのが「殊勝(しゅしょう)なさま」と言う言葉である。 「あの公設秘書のことだけど・・ご主人の日の丸議員さんには殊勝な心がけだよね・・ウチにもあんな秘書さん欲しいよね」  このような体験から私は健気という言葉を聞くと、ついその対象を女性とイメージしてしまい、殊勝という言葉にはネクタイが似合う男性を想像してしまったのである。 だがこの思い込みこそ、私の周りの環境と、何よりも私の先入観がそうさせたものに違いない。  だが価値観や働きかたが多様化している現代社会では、そのが男子はこうで、女子はこうあるべきである、などウッカリ声に出そうものならたちまち大炎上してしまう。  私が聞きかじった健気や殊勝のセリフが登場する時代劇は今から遡る(さかのぼる)こと二百数十年も昔のことである。果たしてこれから先の男と女は・・?
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