あだ名

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あだ名

 2030年春のこと、俺は宅配業社“オレンジ社”の関西支店・大山店に勤務している。 以前は関東の青山店に勤務していたが、集配業務の人員が不足と言うことで、2か月前に急きょ関西の大山店への転勤辞令を言い渡されたのである。  俺の名は、梅宮亜紀(あき) 26歳女子・・の筈なんだが仲間は俺のことを、アキオと呼ぶ。 自分で言うのもおこがましいが、目鼻立ちがハッキリとした折角の美人なのに、仲間達はどうして俺を亜紀オと男名前で呼ぶのだろう? 「ねえ(じゅん)?・・どうしてみんなは俺のことアキオって、男みたいなあだ名で呼ぶんだろうかね?」 「そない言うてもアキオが自分の事を“俺”って言うくせに・・男あだ名で呼ばれたくらいで何で悩んでるのんか・・俺の方が訊きたいくらいや!」 俺の話声がハスキーだから⁉・・いや言葉使いにことごとく品が無いから⁉・・ どうやら顔立ちが“イケメン”と周囲の女性が騒ぐことから、図に乗った俺は,ますます自らが男に憧れているのかも知れない。  このように仲間同士だからこそ、あだ名での呼び合いも許されている。また逆にあだ名で呼びあえていることが、大山店就任2か月の俺でも仲間との距離感を感じることなく仕事が出来ているのかもしれない。  だが気の知れない第三者から突然あだ名で呼ばれたとすれば、あなたならどうだろう? 俺は思う「あなたにあだ名で呼ばれる筋合いはない!」と・・
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