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例えいずれかの場で火照を探し当てたとしても、あの主が素直に戻るとは思えない。
とにかく一筋縄ではいかないこの国の王に、誰も敵う者はいない。
そして確実に────。
「またしても間に合わぬのか……」
未だかつて、一度も謁見の時間に間に合ったことはなかった。
うろたえるのはいつだって火照と炎獅を除いた周りの者たち。
豪胆な火炎国の将軍にこのような顔をさせるのも、また王とこの伝達師だけである。
そして、いつまでも待ってくれているあの方の元に、火照は悪びれもせずに現れる。
だけどあの方は、呆れつつも笑顔で迎えてくれるのだ。
炎獅は牙を剥き大きく欠伸をする。
謁見の時間までは、あと半刻。
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