『火炎国の章・火照の熱情』・半刻前

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例えいずれかの場で火照を探し当てたとしても、あの主が素直に戻るとは思えない。 とにかく一筋縄ではいかないこの国の王に、誰も敵う者はいない。 そして確実に────。 「またしても間に合わぬのか……」 未だかつて、一度も謁見の時間に間に合ったことはなかった。 うろたえるのはいつだって火照と炎獅を除いた周りの者たち。 豪胆な火炎国の将軍にこのような顔をさせるのも、また王とこの伝達師だけである。 そして、いつまでも待ってくれているあの方の元に、火照は悪びれもせずに現れる。 だけどあの方は、呆れつつも笑顔で迎えてくれるのだ。 炎獅は牙を剥き大きく欠伸をする。 謁見の時間までは、あと半刻。
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