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場内に流れる水の音に耳をすませる。
サラサラと流れる水が心地よくて、水照は知らず口元を緩ませた。
「水照、また火の王から書簡が届いているわ」
凛と涼しげな声とは裏腹に、その言葉一つ一つが不快だ。
いっそ聞こえぬふりをしようと、そっと目を閉じてみる。
「聞こえているんでしょう?水照、もうこれで何通目かしら。いい加減に中身を確認した方が良いんじゃない?もしかしたら外交上大切な物かもしれないから」
水静国の伝達師である水猫によって、文机の上の書簡は前足で器用に並べられていた。
「水猫、見なくても分かっている。あいつのことはもう分かりすぎるほど分かっている。それよりもあの方との謁見に向けて精神を落ち着かせたいのだ」
清らかな水の流れ出浄化されていた真っ白な心に、今、マグマのようなドロドロとした感情が湧き上がってくる。
気を落ち着かせようと水猫の艶やかな毛並みを撫でると、首元の鈴がリンと鳴った。
「だけど、あまりにも異常だわ。今までこんなにも短期間に書簡が来たことがあったかしら」
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