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水照の膝の上から顔を見上げる水猫が、心配そうに眉を下げる。
その真剣な表情に、水照は思わず文机の上の数通と文箱の蓋を押し上げるほど入れられた数十通の書簡に目をやった。
「一番新しい書簡だけでも確認してみましょうよ」
水猫の声に背中を押され渋々手に取った書簡は、あの国のあの王そのものであるかのような深紅の和紙。
指先でつまみ顔を顰めながら開いた紙には、なんとも荒々しい文字が躍る。
読み進めるうちに段々と深くなっていく眉間の皺に、水猫は膝の上から下りて距離を取った。
「やっぱり見るんじゃなかったーーー!」
文机をひっくり返して書簡をビリビリにするのは、もう見慣れた光景。
水猫は、深紅の紙の向こうに、勝ち誇った顔を見たような気がした。
謁見の時間までは、あと半刻。
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