10人が本棚に入れています
本棚に追加
『あぁ、どうしてあんなに要領が悪いんだ』
今年高校生になったばかりの五十嵐朝陽は、彼女を見るたびにいつもため息をつく。
『ほら、後ろ。後ろであいつらが笑ってる。お前の制服のスカートの裾が折れていて今にもパンツが見えそうだって、指さして笑ってるよ』
別に、そのパンツが見えそうな彼女にいつも注目しているわけではない。
だけど、気がつくといつも視界に入るのだ。
そして、彼女のその要領の悪さについため息をついてしまうのだった。
『あぁ、もう!早く帰りたいけど別の道から行くしかないじゃないか!』
朝陽は助けない。
たとえ彼女のパンツが見えそうになろうが、彼女の上履きが三日経たずになくなるたびに玄関で立ち尽くしていようが、いつもため息をついて横を通り過ぎるだけだった。
早く帰ること。
今の朝陽にはそれだけが全てだ。
最初のコメントを投稿しよう!