第12話 全国大会での演奏

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第12話 全国大会での演奏

スカルラッティはバロック期の作曲家だけど、バッハやヘンデルとは異なる作風を持ち、イタリア風の華やかな装飾音に彩られた曲を数多く作曲している。 ソナタK(カークパトリック)380、L(ロンゴ)23は、鳥のさえずりのような美しい装飾音が冒頭に組み込まれている名曲中の名曲だ。 最初は、小さな鳥がさえずっているように…そのあとは、さまざまな鳥が。 そう、例えば、お父さん鳥やお母さん鳥、赤ちゃん鳥… 僕は、たくさんの鳥がさえずっている様子を楽しく見つめながら、鍵盤の指を動かし続けた。 時には、嵐がきたりして巣を守るのも大変、敵に襲われることもあるかも… でも、いつでも鳥たちは楽しく美しくさえずる。大丈夫かな?と不安に思っても、切ないほど美しく、そして上品なまま曲を閉じる。 息を整え、バルトークに入る。 メロディーに民族色が色濃く表れた冒頭部分。続いて、まるで楽しく踊っているようなリズミカルな部分に入ったかと思えば、やはり民族調のメロディーが表れる。 高音部のキラキラした部分は、敢えて男らしく演奏することにしていた。リズムは揺るがず、毅然と、その中で注意深く光る音色を作り出す。 続いてハイドンのHob.XVI/39 第1楽章。ト長調の明るいメロディーとリズムを特徴的に始め、すぐに暗雲が立ち込める。 短調の部分こそ、僕の大好きな部分だ。ロンド形式で目まぐるしく曲が変わっていく。色んな要素が変わるのが楽しくて仕方ない。ビックリ箱のように次は何が来るんだろう?聴いてくれる人がワクワクしてもらえるように演奏できていたらいいな… そしてチャイコフスキーのノクターンOp.19-4 この演奏が、今回の結果を決めるだろう。
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