第5話 ピアノの先生への初恋

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第5話 ピアノの先生への初恋

はるか先生に会った翌日、僕は思い余ってタケルくんにLINEした。 「タケルくん、春休みで戻ってきたよ。遊びに来ない?」 その日何も予定がないようで、すぐに自転車で遊びにきたタケルくんは、また背が伸びているようだった。 僕も伸びているはずだけど、タケルくんは小さい頃から背が高くて、一体どこまで伸びるんだろうって感じだ。細くて相変らず文化系男子、って感じはあったけど。 高校生になるんだなと思うと、一気に大人な印象を受けた。 ピアノを弾いて、はるか先生の話をしてみた。 「昨日さ、はるか先生に会いにいったんだよね。髪型変わっててビックリした」 タケルくんは、あまり多く話すタイプではない。いつも俯いているような印象で、よく喋る僕と違って寡黙な感じ。 友達もそれほど多くなくて、教室の隅に一人でいて本でも読んでるタイプ。 僕が話したことに返事はしてくれるけど、自分からあれこれと情報は発信しない。 普通に話していては、僕の得たいものは得られないだろう。 僕はタケルくんに爆弾を投げることにした。 「懐かしかったな~実は僕、初恋だったんだよね、はるか先生」 幼稚園生のただの初恋話だ。でも、俯いていたタケルくんの目線がすっと横に動いたのを、僕は見逃さなかった。 一体、なんて返してくるだろう。 ふーん、と流して終わりかもな、と思っていた僕に、タケルくんは意外な返答をしてきた。 「ピアノの先生に初恋、って多いのかな?」 どうやら初恋話は続けられるようだ。 タケルくんがこの手の話に乗ってくるのは、本当に意外だった。 恋バナに少し興味を持った?彼女が出来た?それとも? 「どうだろ?でも、ほら、あのジャニーズっぽい子とかも、絶対はるか先生に恋しちゃってると思うよ」 僕は、他の男の子の生徒の話も振ってみた。 それを聞いたタケルくんは、俯いていた顔を少し上げて、僕を見て黙っていた。 もしかして、はるか先生のこと、タケルくんも意識してる? 二人がピアノを一緒に奏でるのを想像したら、胸がチクリとした。 その曲は、ショパンのノクターン。 はるか先生が、この前僕に弾いてくれた曲だった。
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