ふたりの始まり。

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 今日は二人とも早めにきたことが幸いして、まだきていない人の方が多い為そこまで集まってはいない。だが、来ている人はこの騒ぎに耳を立てている。日本人の野次馬根性は、こんなところでも発揮されてしまうのだ。  そんな周囲の目を気にすることなく、二人は言い合いを始める。 「ボクの泥団子をうばったのは、カラスじゃなくてランコちゃんでしょ?」 「何を言ってるの? 蓮くん」  下を向いていた顔を上に上げて、蓮は蘭子を見ていた。涙に濡れた目で、目を吊り上げて。 「きのう泥団子がほしいっていって、あげなかったから、ボクからうばったんでしょ? そうでしょ?」 「ちょっと、蓮くんやめて」 「うばってなんか、ないよ」  子どもらしからぬ憤怒の感情を滾らせる蓮に、先生は動くことを一瞬躊躇ってしまう。今の彼に逆らったら何をされるか分からない、そう本能が判断して防御の姿勢に回ってしまう。  蓮は蘭子だけを見て、「ウソをつくのをやめろよ」と距離を縮めて問い詰める。だが、蘭子は困惑した表情で「だからうばってないって」と言うだけだ。
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