ふたりの始まり。

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 蘭子の顔を見た途端、蓮はどうしようもない衝動に駆られて彼女を殴っていた。その瞬間に「キャァぁぁーーー!」と言う甲高い声が上がり、蓮は耳が痛くなり眉が吊り上がった。  鬱陶しいと周りを見回すと、面白いくらいに怖がって散り散りにさっていく様子が見えた。まだ跨っていた蘭子のお腹から振動を感じて、蘭子の方に視線を戻すと彼女は笑っていた。  まるでテレビのお笑い番組を見て、ケラケラと笑うように。とても無邪気に笑っていた。 「コレで、レンくんの方がわるものだ」  そう言う蘭子を見て、蓮は「恐怖」と言う感情を覚えた。  この子は、どこまで考えて行動をしていたのだろうか。蓮が怒って、掴みかかってしまう所まで想像していたのだろうか?  いや、蓮にも頑張ったら想像はできるのかも知れない。だけど、蓮は蘭子と違って「周りを味方につけるような行動」が思い付かなかっただろう。 「蓮くん!! 何をしてるの! 蘭子ちゃん、大丈夫?」 「蓮! 何をしてるの!! 蘭子ちゃん、ごめんね?」  だから、こういう時に先生に優しく声をかけてもらうことが出来ないのだ。そして、実の母親にも。
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