ふたりのかくしごと。

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ふたりのかくしごと。

 あの「泥団子事件」から数日経った。  みんなから少し浮いていた蓮は、事件によってみんなに腫れ物扱いされるようになった。みんなから「よく分からない」とされていた蓮の存在が、「怒りやすくて、すぐに殴ってくる子」という認識に変わったからだ。  そのために気の弱い女子などは目があっただけで涙目になったりということもあったが、今は目を逸らされるだけになった。その目が涙目になっていたとしても、目を合わせられない蓮が知る由もない。  そんな蓮に、唯一話しかけてくる怖いもの知らずの存在がいる。 「ねーね、レンくん。一緒に遊ぼう?」 「・・・・・・」  泥団子事件の被害者である、「鈴木蘭子」。彼女は以前と変わらぬ様子で、蓮を遊びに誘ってくる。しかも、泥団子事件があった次の日から毎日である。  友達が「大丈夫?」と聞いても「大丈夫!」と返ってくるし、大人が同じように問いかけても「大丈夫だよ! レンくんはお友達だもん」と笑顔を見せる。  蘭子はいくら蓮に無視されようとも、笑顔で毎日話しかけている。その粘り強さは、大人が感嘆の念を抱いてしまうくらいだった。
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