ふたりのかくしごと。

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 蘭子は何を言わずに蓮の瞳をじっと見て、彼が話し始めるのを待った。いつもの彼女なら「お話って、な〜に?」と言ってきそうなものだが、今の彼女にはその言葉は似合わない。  無言でいつもの笑顔を浮かべる彼女が、とてもしっくりきた。  そのことに気がついて、蓮は今まで感じていた彼女への違和感のピースがぴったりとハマる音がした。 「ボクは、キミと似てるとおもう」 「そうだね、わたしもはじめてみたときから、そうおもっていた」 「ボクは、みんながたのしいときに、たのしくおもえない。かなしいとおもえない」 「うん、わかるけど、そうおもえない」  蓮と蘭子は、同じよな悩みを持っていた。「他人に共感できない」こと、「他人のことを考えられない」こと。それは幼少期の教育の大切なところ、むしろ幼少期の教育では一番大切とされているところ。それが分からないのだ。 「ボクはそうおもえないし、わからない。けど、キミはわかってる」 「うん、わからないけど、わかってる」  蘭子は更に口角を上げて笑うが、目には温かさがなくとても冷たかった。
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