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自転車の荷台につけられた幼児用の椅子へ母に乗せてもらい、蘭子は足をプラプラさせて出発するのを待つ。その動きによって自転車はぐらぐらと不安定に揺れる。
「ちょっと、足をプラプラするの止めなさい! 危ないわ」
「はーい」
毎日のように聞いている注意を笑顔で受け止めたら、家に向かって自転車は動き出す。自分で走っても体験できない疾走感を肌に感じながら、こうして家に向かう瞬間が蘭子は大好きだった。
もし自分が自転車に乗れるようになったら、どこかの魔女が宅配便してる映画の子みたいに坂道を駆け下りたい。そして、大きな声を心のままに意味のない言葉を叫んでやるんだ。
そしたら絶対に気持ちが良い。
「わぁぁーーー」
「蘭子、うるさい!」
ちょうど坂道を下り始めたので、思わず叫んでしまったら母に怒られてしまう。この夢を叶えるためには、わたしが自転車に乗れるようにならなきゃ。蘭子はそう思いながら、お母さんの服をギュッと掴んだのだった。
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