ふたりの始まり。

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 蘭子は母に言われて、初めて自分が泣いていることに気づいた。スカートを見れば涙の跡が見えたし、頬を触ってみたら伝ってくる涙がわかった。ハンカチ越しに泥団子を膝に置いて、両手で頬の涙を拭った。  すると手についた砂が頬についてしまったようで、「ああ、もう汚して・・・。本当に何をしてるの」と困惑しながらも母が服の袖で蘭子の頬を綺麗にしてくれた。  母が涙を拭いてくれたおかげで落ち着いてきた蘭子は、時々つっかえながらも事情を話し始める。 「あのね、綺麗な泥団子だったから。宝物にしようとして、お部屋に持って帰ろうと思ったの。ハンカチに大事に包んで鞄に入れて、お腹に抱えて持ってきたのに、割れちゃったの。ピカピカじゃなくなったの」  蘭子のなんとも子供らしい思考に母は苦笑いを浮かべながら、そっと麗子が泥団子を入れてきたという鞄の中身を確認した。案の定、鞄の中に砂が散乱してひどい状態だった。  母は叱るために蘭子の前に屈んで、両手で頬を掴んで視線を合わせる。 「こうして泥団子を鞄の中に入れちゃダメなの、汚れちゃうでしょ?  こうやって天罰か下っちゃうからね?」
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