ふたりの始まり。

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 そう諭す母に蘭子は目を見開いたかと思うと、勢いよく立ち上がり腹の底から湧き上がる感情のままに口を動かす。 「何よ! 何よ、テンバツって。いっつも言うけどイミがわからない! カミサマが見てるっていうの? カミサマなんているか分からないのに。ただおかあさんが怒りたいから怒ってるだけじゃない! バカ」  自分の言いたいことを言い切った蘭子は、ダンダンと床を鳴らしながら階段を登り自分の部屋へと引きこもった。  蘭子は我が強い所があり、怒ってもこうして引きこもることが多々あった。母はため息をついて、リビングでおやつの準備を始めた。  一方、部屋に篭った蘭子は布団の上で体育座りをして、その小さい体を丸めていた。両膝に埋めた顔は恐ろしいほどの険しいもので、到底4歳の女の子に相応しくない表情だ。  その顔のまま、重々しく口を開けて地獄の底から出しているかのような低い声でこう言った。 「ふざけるな、天罰が下るわけないじゃん」  その後、30分程度で蘭子はリビングに戻り母に「ごめんなさい」と謝っておやつを食べた。
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