0人が本棚に入れています
本棚に追加
その翌日、いつもと同じように起きて用意し、蘭子を自転車に乗せて幼稚園に送って行こうとした。だが、タイヤが一周するたびにべコンっと跳ねるような衝撃が二人を襲ってきた。
「何、パンク?」
「おかあさん、ベコベコするけど、どうしたの?」
「自転車がパンクしたからね。今日は車で行こうか!」
「うん、わかったー」
母は急いで車の準備をして、蘭子を後頭部座席の幼児用シートベルトに座らせて出発した。いつもの自転車も楽しそうだが、普段とはちがう車での通園に蘭子は嬉しそうにはしゃぐ。その姿を母はとても微笑ましく思う。
「それにしても、本当に急ね。悪戯でもされたのかした?」
「ちがうよ、おかあさん」
あまりにも温度のない声に母は驚いて、蘭子の様子を見ようとバックミラーを見た。そこに写っていた蘭子の笑顔は完璧なもので、いつもなら「私の天使」と思える。そのはずなのに。
「ワルイことしたら、天罰が下るんでしょ?」
このときの蘭子は、悪魔にしか見えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!