ふたりの始まり。

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 その日の蓮は、普段より早く幼稚園についていた。蓮は「おかあさん、あしたはランコちゃんと作った泥団子をはやくかくにんしたいから、早く行こ?」とお願いしたのだ。  それを聞いた両親は「蓮が誰かと一緒に遊んで喜ぶなんて久しぶりのことだ」と大喜びして、今日の朝を迎えたのである。 「おはようございます、蓮くんと蓮くんママ。今日はいつもより早いですね」 「おはようございます、せんせー!」 「おはようございます、先生。今日は蓮が早く来たいというものですから」  そんな大人の社交が始まったので、蓮は何も言わずに目的の場所へと駆けていく。冒険に出る前のように目をキラキラとさせて目的の下駄箱についた蓮は、あるはずのものがないことに気づいて顔から表情が抜けた。 「ない!!! なんで!」  周りにいた子が驚いて思わず泣いてしまうくらいの声量で叫んだ蓮に、先生と母は「大丈夫?」と言いながら駆け寄る。その間も「ない、なんで」とブツブツ呟く様は、ぞくりとさせられる恐ろしさを感じさせた。
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