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一夜明けて朝の心地よい風が吹く中、僕たちは大学へ向かって歩いていく。
「なんか、照れるね」
一段、また一段と階段を登りながら、僕は隣を歩く美咲ちゃんに向かってそう言った。美咲ちゃんははにかむように無言で頷き、歩調を合わせる。このまま一緒に、一歩一歩前へ進んでいきたいなぁ……僕は今、心底そう願っている。
暫く歩いていくと、銀行のATMが見えてきた。僕はその中に入ってお金を下ろす。
「はい。ありがとね。助かった」
僕はそう言って美咲ちゃんに昨日の千円を手渡した後、
「じゃあ、行こうか」
と言って2限目の経済原論の教室へと足を向けた。
「ところで圭司君、来週の日曜どこ行く?」
「そうだな……美咲ちゃんはどこか行きたいとこ、ある?」
「確か来週からなんだよね。まじかるパルランテの劇場版。行ってみない?」
「じゃあ行こうか。アレをカップルで見に行くのって珍しいだろうけど」
「いいじゃん別に。細かいことは気にしないの!さ、行こう」
美咲ちゃんはそう言って僕と手をつないだ。道端に植えられている木々が鮮やかに色づいていた。
【終】
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