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高木はそんな風に慰めてくれたけれど。
素晴らしいDNAを持つ瑠奈を、平凡な娘には育てたくなかった。
何の取り柄もない、ありきたりな人生を送るなんて。
クリニックの帰り道、手をつなぎながら瑠奈に聞いてみた。
「ねぇ、瑠奈、バイオリンはやめてピアノを習ってみようか?」
本人に決めさせたら頑張れるかも知れない。
「うん! ピアノがいい!! 瑠奈、ずっとピアノが弾きたかったの!」
飽きっぽく、新しいもの好きの瑠奈は、この提案にすぐに飛びついた。
高額なピアノを購入して、瑠奈が本当にやる気を出してくれるのかは、甚だ疑問だった。
だけど、なにに向いてるのかなんて、やってみなければ分からないのだ。
瑠奈はまだ五歳だ。諦めるなんて早過ぎる。
そんな風に思いなおしては、希望を捨てずに沢山の習い事に挑戦させてみたけれど。
瑠奈が夢中になれるものはひとつもなかった。
興味を持ち続けられたのは、アニメとお洒落だけ。
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