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ママ友の瑞季とは、子供が大きくなるにつれて疎遠になっていった。
梨々香ちゃんも小学校の低学年までは、瑠奈と遊んでいたけれど。
勉強がよくできる梨々香と、お洒落にしか興味がない瑠奈とでは、話が噛み合わなくなるのも当然だろう。
梨々香とは今も同じ公立の中学に通っているがクラスは違う。
明るくて面倒見のいい梨々香は人気者だ。
生徒会の副会長を務めている。
保護者会などがあると、たまに校内で瑞季と出くわすことがあった。
避けるのもなんとなく惨めに思えて、平静さを装い、当たり障りのない話をしていたけれど。
梨々香の将来の夢は、国境なき医師団に加わって、紛争地帯などで傷ついた人たちを助けることなのだそう。
まだまだ先の話で、医者にもなっていないうちから心配するのもなんだと思うけれど、梨々香ならそんな夢を実現できたとしても、少しも不思議ではない。
大切に育ててきた娘が紛争地帯で働くことになったら、親は心配で夜も眠れないに違いない。
だけど、なんと素晴らしい志を持った娘なのだろう。
瑞季と話をしていると、娘の妊娠におびえている自分の悩みが恥ずかしすぎて、一層惨めな気分にさせられた。
梨々香は今だって美人とは言い難い。
だけどその表情は、溌剌とした自信と聡明さに満ちあふれている。
小学生の頃から読書家で、図書館の本を片っ端から借りては読破していた。
それはDNAのなせるワザなの?
それとも育て方?
夫にはこう言われた。
" 育て方じゃない! おまえの生き方そのものだよ ” と。
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