みめ麗しい子

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世の中、上手くいかないものだ。 多額の不妊治療費を支払って、子供を得ようと必死の女もいれば、こんな風にいとも簡単に妊娠、出産して、せっかく授かった子をサッサと里子に出す女もいる。 「その方、自分で育てようとして産んだのではなかったのでしょうか?」 「彼女は堕ろそうとしてこの病院へ来ました。説得して産んでもらったんです。僕が育てるので産んで欲しいってね」 えっ、先生が? 「高木先生が? どうしてですか? 先生には奥様もお子さんもいらっしゃるのに」 「僕、彼女の大ファンなんですよ。よくコンサートも聴きに行ってました。そんな彼女が子どもを堕ろすなんて、なんだか凄く勿体ない気がして……」 世界的に有名な美人バイオリニスト? 数名のバイオリニストの顔が浮かんだけれど。 「先生が憧れていた女性の子なのですね。じゃあ、なぜわたしに?」 「妻にどうしても無理と言われましてね。僕ひとりで育てられるわけもないんで諦めました。仕方ないです。紗良さんなら、ちゃんと育ててくれる気がして」 「そうでしたか。そんな事情が。でも、素晴らしい才能を持ったご両親から生まれた子なんですね」 頭脳明晰な父親と、美貌のバイオリニストである母親。 「そうですよ。まるでデザイナーベビーのようでしょ」 「デザイナーベビー?」 「遺伝子を操作してデザインされた子供ですよ。病気などの悪い遺伝子は排除して、誰もが羨むような容姿と能力を備えた、理想の子どもです。承認されてないので今はまだ作れませんけどね」 ーーデザイナーベビー。 科学技術の目覚ましい進歩は、この先どこまで進んで、どこまで許されるのだろう。
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