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「わー 可愛い。裕二さんにそっくり!」
腫れぼったい小さな目に、ボテッとした大きな鼻。
扁平な顔をした赤ちゃんはちっとも可愛くなかった。それでも一応、可愛いと褒めてあげるのが礼儀というものだろう。
「もう、言わないでよ〜 みんなにパパにそっくりって言われるの。将来この子に恨まれそうだわ」
「ふふふっ、大丈夫よ。女の子は年頃になると変わるって言うじゃない」
「そうだといいんだけどね〜 梨々香ったら、もういい加減に泣きやんでよ〜」
「ふぎゃー、ふぎゃー! ふんぎゃあー!!」
赤ちゃんは顔を真っ赤にして泣き続けていた。
羨ましいはずの瑞季が気の毒で仕方がない。
「子育てって、こんなに大変とは思わなかったなぁ。紗良もよく考えたほうがいいよ。夫婦ふたりの生活っていうのも、そう悪くなかったなって私、今ならそう思えるの」
子供ができないわたしへの配慮からか?
確かにこんなに始終泣かれていたら、産後うつになってもおかしくはないとは思うけれど。
おっぱいをあげてもあやしても、一向に泣き止まない瑞季の子を見ていたら、満ざら嘘でもないように思えた。
瑞季は少しも幸せそうに見えなかった。
待望の赤ちゃんが生まれたというのに。
だからといって、子供への執着がなくなったりはしなかった。
家に帰ると途端に虚しさに襲われた。
どうしても子供が欲しい。
まるで、何かに取り憑かれているかのようだった。
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