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「じゃあなんでムキになるのよ!」
(あれ? 相手、黄金姉様なの?)
水羽の言葉から、相手はてっきり炎珠だと予想していた木乃実だったが、聞こえて来たのは黄金の声だった。
「アンタがしつこいからでしょ! いつからプライベートを逐一報告しなきゃいけない決まりになったわけ!?」
「そうじゃない、でも!」
(この二人の言い合いなら、いつものことだけど……でも、これって……)
珍しく激しい語気の水羽はもちろん、黄金の真剣な物言いからも、普段のどこか掛け合いめいたものではないことは明らかだった。
(もしかして……もしかしなくても、これってケンカだよね!? ど、どうしよ……)
階段の陰でオロオロする木乃実を他所に、二人の穏やかではない会話は続いた。
「そうじゃないなら何よ!?」
「ショックだったのよ! 親友だと思ってるのは私だけなの? デートする相手ができたんなら、私にだけは打ち明けてくれたっていいじゃ……」
「だから違うって何回も言ってる! もういいでしょ? 私シャワー浴びたい」
「……わかった、ごめん。でもっ、もしそういう人ができたら、相談してほしいの」
「……何それ? マウント取ってんの?」
「え? 水羽、何言って……」
「もうイヤ! ほっといてよ!」
水羽が叫んだと同時に、玄関からこちらに向かってくる足音。木乃実は気まずさのあまり、慌てて階段を引き返したのだった──。
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