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(昨日のアレ、やっぱり炎珠姉様が言ってた『男とデート』って話だよね)
朝食に殆ど手をつけないまま、木乃実は思案に暮れる。
(けどアレは、炎珠姉様の早合点だったんじゃないの?)
昨晩、帰ってきた炎珠によれば「誰かといるとこなんて見てないよ! けど、アレは絶対デートだもんね!」とのこと。あまりにいい加減な情報に、木乃実も月子も落胆して自室に戻ったのだ。
(にしては、おかしい気も……)
先にリビングを出ていった黄金がそれを知らないとは言え、もしただの誤解ならば、水羽があそこまでムキになるのは図星と言わんばかりに不自然だ。けれど、そうまでして必死で隠す必要が──。
となかなか鋭い推理を展開する木乃実の傍らで、ピンクのスマートフォンが「ブーブブ」と震えた。
『おはよ。今日もいつもの場所で。時間は十九時半で大丈夫かな?』
メッセージを確認すれば、木乃実の探偵ポアロさながらに灰色だった脳細胞が、一瞬にしてピンク色に染まる。
『ポセ様、おはようございますです! もちろん大丈夫でございまする!』
そう、今日は木曜日。毎週木曜の夜は、憧れの『ポセイドン様』とデートなのである。
もっとも、木乃実がそう呼んでいるだけで、本名はもちろん違う。断じて、乙女ゲーム『シャイニングラブ~愛は天地を駆け抜ける~』のキャラクターではない。
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