6人が本棚に入れています
本棚に追加
黄昏時。
そろそろと夜の闇が近づき、空が紫に染まるひと時。
学校帰りの弓香は、大通り横の歩道を歩いていた。片側に車線の大きな道路で、大型の車がひっきりなしに行き来していた。
車の音が煩く、排気ガスも酷いのでついつい早足になる。
ふと彼女が立ち止まったのは、何か声を聞いたような気がしたからだった。
周囲を見回した弓香は、向こう側の歩道から手を振る誰かに気が付いた。
背後にある市民公園の向こうに傾いていく夕日のせいで、顔ははっきりと見えなかった。
なんとか見えた制服姿から察するに、同じ学校の女子だとは気が付いた。
手を振るぐらいだから、きっとクラスメイトだわ。
「じゃーねー」
弓香は自分であることを分からせるため、大声で叫んだ。
だが、ひっきりなしに車が行き来する大通り。
果たして聞こえたかどうか。
大型トラックが彼女の目の前を横切った。
通り過ぎた後、その子はもう通りの向こうにいなかった。
英恵ちゃんか玲奈かな。
クラスでも仲良しの子を思い浮かべ、明日聞いてみようなんて思いつつ弓香は再び歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!