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第1話 恋愛詐欺師 坂村直樹
「チョット拓也。どう言う事よ! 時計買ったら付き合ってくれるって言ったでしょ? 」
「お前なんか、初めから好きじゃなかったんだよ」
「ふざけないで、私がどれだけアナタに貢いだと思うの? それにアンタ、証券マンなんて嘘だったんでしょ?」
「俺がお前に奉仕してやったサービス料だ。騙されるのが悪いんだ」
俺は一方的に捨て台詞を吐いてスマホの電源を落とした。俺の本名は坂村直樹、都内の有名大学の2年だ。
こう言っちゃ何だが、俺は高校時代にジュノンボーイコンテストで賞を取ったくらいだ。元々演劇部出身の俺は空気を読んで迫真の演技をする事でいつも女の心を奪っていった。
俺は常に身分を明かさず、偽名や仮の履歴を使って獲物を狙う。
「でも、今回のメンヘラ女はマジでウザかったぜ。だが随分もうけさせて貰ったぜ」
笑いが止まらねえ。何故なら先月、居酒屋でナンパした大手銀行員の女から貢いで貰ったブランド物を質屋に売って稼いだ110万をどや顔でセンスのようにして煽った。
新券の独特な匂いがたまらない。これで80人は騙したかな
全く良い気分だ。世間からみたら言葉巧みに女を口説いて貢がせていることに「恋愛詐欺師」と言う奴もいるが、所詮ひがみだとしか思わないぜ。
だが
「もっと大金が欲しいぜ」
この日は近くの高級焼き肉屋で贅沢な食事をして帰路についた。翌日、授業を終えると、早速、バイトへと向かった。
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