あの頃の夕日に誘われて

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大人になってから、月日と言うのはあっという間に通り過ぎていくようになった。 まぁそれもそうだろう。 大学を卒業し、就職してからもうすぐ七年になるが。俺の一日は毎日変わらない。 朝は毎朝七時に起床し、顔洗って歯磨きして弁当作って仕事に行く。それからずっと営業周りで、暑い日も寒い日も俺は頭を下げ、営業スマイルを客に振りまき、それが終わればずっとパソコンとにらめっこ。 結局それが夜の十時まで続き、家に帰りついた頃には、時計の針はいつも夜の十一時を刺そうとしていた。 「はぁ……ただいま」 「あ、おかえり裕二(ゆうじ)。いつも遅いね」 「あぁ」 高校の頃から付き合っている彼女の(めぐみ)とは同棲しているが、俺が就職してから徐々に会話が減っていき。顔を合わせるのも触れ合うのも、ここ最近は全くない。 きっと原因は、俺がいつまで経っても結婚しようとしないからだ。 仕方ない。だって今は、金も時間も余裕がない。こんな状態で結婚しても上手くいくわけがないのだから……。
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